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禁断の果実に口づけを
第10章 普通に憧れる洋子


 髪型だけ、ほんの少しお洒落になっても、普段着の上にダウンを合わせて街を歩く姿がショーウィンドウに映り、アンバランスさを感じた。

 『おばちゃん丸出しだな…』
 心で小さく呟く。


 街はクリスマスソングが流れ、駅前のデパートはセールなどで賑わっていた。
いつもなら、夕飯を買って帰り、家の中でゴロゴロしているのだが、今日はこのままいつも通りに終わってしまうのが勿体無い気持ちにもなっていた。

 何かに誘われる様にデパートの中に入り、1階にある化粧品売り場の香りを嗅ぎながら歩いた。店頭に置いてある鏡に自分の髪の具合を映し、にやけてしまう顔を隠せずに居た。

 『綺麗になりたい……
もっと……』

 そんな洋子を見て、美容部員が声を掛けた。
気分の良い洋子は、乾燥肌の悩みなどを打ち明けて、化粧水くらいは買っていこうかと思ったが、『時間があるならお化粧直ししましょうか?』などと言われ、その誘いに乗る。
化粧を落として、スッピンを晒し、一から化粧をして貰う。ただ塗ったくる自分の大雑把な化粧とは違い、時間を掛けて丁寧にメイクする事で、小さな変化が現れのだ。




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