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禁断の果実に口づけを
第10章 普通に憧れる洋子
 

 部屋に帰り、電気を点け、手から重い荷物を下ろし、自分の部屋の姿見で顔を映す。

 『少し、若返った気がするわ』

 買ってきた洋服も合わせた。
ハイネックのフワッした生地の白いセーター、黒のベストダウン、紺色のガウチョパンツを着てみた。
サイズも合うし、自分の持っているカジュアルな洋服の中では一番お洒落な感じがした。

 買ってきた化粧品で化粧直しをし、艶のあるオレンジのルージュを引いた。

 魔法がかかった様に、洋子はバックを手に取り部屋を飛び出した。
車のエンジンをかけ、ハンドルを握り走り出す。

 FMから流れてくるクリスマスソング。
そのクリスマスソングを聞きながら、昔、CMで見た、短くも温かくドキドキするクリスマスストーリーを演じる主人公に自分を重ねていた。

 いつものパーキングに車を停める。
そして、白い息を吐きながら走った。

 昭和なレトロアパートの階段を上がり、ドアチャイムを押す。
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