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禁断の果実に口づけを
第10章 普通に憧れる洋子
駅前の屋台ラーメンを目指し、冬の夜道を歩く。
【コツコツ】と、洋子のオニューのブーツが、アスファルトの道を歩く度に音を鳴らした。
「髪、切ったべ?」
後ろも振り返らず、不意打ちに伸介が聞いてきた。
「うん、切った」
伸介は笑った。
「おかしいの?」
洋子はムキになって聞く。
「いいんじゃね?
黒々としたチンポのカリみたいな頭より、大物演歌歌手みたいで」
『何?チンポだと!!
大物演歌歌手って誰だよ!?』
「だ、男性器とか大物演歌歌手って何よ!」
怒らないと決めていても、ついムキになって言ってしまう。
「おもしれーな、洋子。
怒ってんの?
以前の頭はチンポカットだべ?
今は、ほらあれだ!紅白なんかでど派手な衣装で勝負する人居んだろ?
あんな感じ。
一応、褒めてんだけど…」
「はぁ?
どこがよ?」
「ここぞって時に、人目を惹く事やつい期待しちまう様な事に挑戦出来るってのはさ、俺的には飽きなくていいって事!」
『なんだ?
その褒め方……
ムカつくわ〜
似合うなら似合うって言えよ!』
「ふう…」と洋子は溜息をついた。
でも、この男をここまで言わせるのだって、今までの私じゃあ無理だったよね。
「ラーメン、早く食べたいわ……
今夜は冷える」
「袖のないダウンなんか着てくるからだろ!」
そう言いながら、伸介は振り向いた。
「おせぇーよ!もっと早く歩けよ!」
「えっ、あっ、あぁ…」
洋子は伸介と隣に駆け寄る。
「洋子はボリュームがあるから、風よけになるな」
本当に口の悪い男!
だけど、この男の隣は何故か温かい。