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禁断の果実に口づけを
第2章 秋山洋子の噂


 ランチを終えて、元気に戻った伊織を見て、一旦安心する朋子。

 午後からは、それぞれお客様のところに訪問する予定があり、
夕方営業所に戻る事を確認して別れた。

 夕方に戻ってみると、自分のディスクのパソコンで、今日の日報を入力していた伊織。

 「お疲れ様です」
穏やかな笑顔の伊織。

「お疲れ様、伊織ちゃん!」
朋子も今日の日報を入力する為にパソコンを開いた。
ふと窓辺を見ると、数人が集まりヒソヒソと話している。
段々その数は増えていった。
人だかりになってゆく窓辺に実際に行ってみると状況が読めてくる。

 車の前で立ち往生している秋山洋子。
どうやら、取り引き先に車で向かおうとしたら、パンクしてしまったらしく、困った表情を浮かべていた。

 窓から洋子の様子を伺う人も居たが……

 殆どの人が、『ざまーみろ!』くらいの視線を向け、陰でクスクスと笑っていた。
誰も助けようとはしないし、むしろ見て見ぬ振り。



 ーーそんな中ーー

 いち早く、洋子の元に走ったのは伊織だった。
びっくりして朋子も後をついてゆく。

 他の連中は窓から高みの見物状態。


『怖いわ…
本当に怖い!
こんな時だからこそ、人の心は浮き彫りになるのよね。
だけど、一番不思議なのはーーいつも秋山代理に苛められている伊織ちゃんが何故!?ーー』

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