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禁断の果実に口づけを
第3章 秋山洋子のアクシデント

 洋子は焦った。
所長から頼まれていた顧客の元に、訪問しなければならなかった。

 早目に営業所を出たにしても、この通り、車がパンクしてい動けない……
窓から自分に向けられる視線にも気づいた。


 ーー誰も助けてくれない!!
なんて、冷たい視線なんだろう……
途方に暮れてしまいそうな程、心細い気持ちになる。


「あのぉ、……秋山代理……
車の…パンクですか?」
そう言って、いち早く駆けつけてくれたのが皮肉にも川端伊織。


 『そうよ!
見れば分かるでしょ!!』
と、怒鳴りつけそうになる程、余裕のない自分。


 「そうみたい…
困ったわ……」
そう返事を返すのが精一杯だった。


 「あのぉ、余計な御世話かも知れませんが、近くに車の整備士している友達が居るんですけど‥‥」

 
 『それを早く言えよ!!』

 いつもの調子で怒鳴りつけてやりたいのをグッと抑えた。
今はこの女しか私を助けてくれない。


 「そうなの?
なら、急いで頼んで貰えるかしら?」
やや優しい口調にもなれた。

 「はい」
伊織がその友達に連絡を取る間に、洋子は車のトラブルの事を素直に話し、お客様に時間をずらして貰う連絡を入れた。

 その連絡が終わると、伊織が洋子に話しかけてきた。


 「五分くらいで来てくれるそうです」

 「あっ、有難う‥‥
川端さん……
でも、パンクだから直ぐには直らないわよね‥」

 「とりあえず、車をみてみて、急ぐようなら代車も手配してくれるそうです」


 「そう、助かるわ‥‥
有難う!」

 日頃、伊織にキツく当たっている自覚はあった。
そんな伊織が自分を助けてくれるなんて‥‥
少し、反省もした。


 地獄に仏が、あの川端伊織なわけ………?



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