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禁断の果実に口づけを
第13章 真冬の打ち上げ花火
夫の命の代償は一千万だった。
未来と自分の人生の保障としては、余りにも少ない。
安心出来る額でもなかった。
これが私の夫、佑樹の命の値段だなんて……
『どうして、どうして!!……』
佑樹の訃報を聞いた瞬間から、私の心は闇が覆い、笑顔は消えた。
『人を巻き込まなかっただけ救いよ、朋子』
毎日泣いて暮らし、抜け殻になってしまった私に、母も泣きながらそう言って慰めた。
今、僅かばかり自分達を助けてくれた保険の仕事に就き、生計を立てている。
目の前の男は、一千万を右から左に動かせるだけの財力があった。
それがなくても愛人になったのだろうか?
抱き寄せられて、シャワーの音だけが響く。
安心出来る温もりはそこにはない。
でも、生きていかなきゃいけない人間は、生きる事に必死なってしまうのよ!
その為には、間違いだって分かっていても、どうにもらならない事もある。
罪悪感を感じながらでも、守らなきゃいけないものがある限り…
未来を不憫な子にしない為に…
未来から笑顔を奪わない様に…
守らなきゃ、いけないじゃない!
人並みの人生を歩んで綺麗事を並べる奴等には到底理解出来ないだろうけどね…
「朋子、何考えてる?」
「イヴを健さんと過ごせたら幸せなのにな…
なんてバカな事よ!」
「お前と過ごせたら幸せだろうね…
一晩中、エッチな大人の夜を過ごせるのに残念だよ」
互いの嘘を口から吐き出して、これ以上の言葉を口から出さぬ様、偽りのキスを重ね合った。
『あなたと私の関係はこのキスが物語る。
真実には蓋をする唇なのだから』