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禁断の果実に口づけを
第13章 真冬の打ち上げ花火
✾✾✾
「上手くいくかしら…」
「いきますよ。
後は優美子さんの覚悟だけです」
「冷静でいられないわ…」
晴美の目の前で溜息をつく女。
「プロは仕事が早いし、完璧にやってくれます。
優美子さんは、ご主人の浮気に何度も泣かされて、挙句、性悪女の保険屋にそそのかされ、会社のお金を横領された悲劇の夫人を演じればいいんです」
「私に出来るかしら……?」
『そうね…
世間知らずのお嬢様ですものね…
シナリオは私が用意してあげたけど、上手くやってくれないとこちらも採算が取れないのよ…』
「大丈夫ですよ。優美子さん!
お綺麗だし、女優さん顔負けのルックスじゃないですか!
美しい悲劇の人妻になりきるだけです。
浮気夫から自由になって、自分に正直に生きたいんですよね?
その気持ちがあれば、きっと叶います」
『確かに綺麗だから、それだけは褒めてあげる。
昼間から当たり前の様に、高級カフェでお茶を飲めるあなたをね。
貴女は夫の事業が成功し、見かけだけはセレブ奥様。
暇潰しにミセスの読者モデルまでしていて、外面だけは夫を支える美しいアラフォー女性を気取る。
趣味でイタリアンの料理教室通っているなんてアピールするから探しやすかったわ。
片っ端からイタリアン料理教室を調べて貴女に近づく事が出来たしね。
一回、材料費込の三万の授業料は高かったけど、料理音痴で不器用な女を私が演じるだけで、貴女は警戒心などを持たずに仲良くしてくれたわ。
歳も余り変わらないから、プライベートな話まで気軽にしてくれてさ。
時間を掛けて、控え目な態度で貴女と接し、信頼関係を築いてからは、ペラペラと自分の事を話す様にもなってくれたものね!
面白いくらい、貴女は自分に馬鹿正直なんだもの。
いい拾いものをしたわ。
あんまり人を信じちゃダメなのよ。
私には好都合だったけどね!』