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禁断の果実に口づけを
第13章 真冬の打ち上げ花火


 「喜ぶわ…
未来も……そういう可愛い洋服欲しがっていたから…」

 「なら、もっと早く言えよ!
俺は洋服屋だぞ」

 「健さんとは……
そういうの抜きで付き合わなきゃいけないわ。
お互いの仕事は応援出来ても、プライベートまで入り込んだらいけないのよ。
こんなに優しくされたら……ダメよ!
上手くやらなきゃ保てないわ!」

 「朋子…」

 少し目を潤ませた朋子が健の瞳に映る。

 「ほら、社長さん!
お時間ですよ!
時間ないんでしょ?」

 泣かないうちに、早くこの場を立ち去って欲しい朋子は、心とは裏腹な言葉で促す。


 「あぁ……
またな、朋子」


 名残惜しそうな顔や台詞なんて残さないで!
弱い心に脆く突き刺すのよ!
優しさも偽り色くらいが丁度いいのよ。

 【バタン】と閉まる健の愛車のドア。

 そう、この音も私を現実の距離に帰してくれる。
エンジンがかかると、朋子も自分の車に乗り込む。
健の車が駐車場から出ると、メンソールのタバコに火をつけた。
煙を吐きながら、胸の奥の感情も外に押し出す。

✾✾✾

 この時の二人に、悪しき影の存在など気づく程の鋭さなどなかった。
逢瀬熱に全てを注ぎ、強かな男と女のつもりが……
本当の姿に気づく余地もなく、鈍感で居られたのかもしれない。

 刻々と迫りくる現実を見るまでは……
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