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禁断の果実に口づけを
第14章 勃発
 

 一方の朋子は営業所に帰る前に顧客の家を年末の挨拶を兼ねて何軒か回った。
玄関にクリスマスリースを置いてある家や夜にはクリスマスイルミネーションを楽しむ飾り付けを施した家などを見た。
自分にはもう味わう事のない、家族団欒の温かいクリスマス。
羨ましく、恨めしい気持ちにもなった。
だが、健との逢瀬の余韻がその気持ちを少し和らげていた。
未来に渡したら、さぞかし喜ぶであろうクリスマスプレゼント。
疚しい気持ちもある。
未来はパパと過ごしたクリスマスが記憶に残ってない。
毎年、佑樹の実家から送られてくるお年玉込みのポチ袋と朋子の母が届けてくれるケーキとプレゼントを渡していた。
サンタクロースが家にやって来るというのは、絵本だけの話だと保育園のお友達から言われて帰ってきた時は、どう応えていいのか困った。

 『未来の心の中にサンタさんは居るよ』
そう言うと、未来は胸の辺りを撫でて不思議な顔をした。
 

✾✾✾

 佑樹が居たら何て言うんだろう……
未来が生まれた時、佑樹は凄く喜んで、小さな未来を恐る恐る抱いて泣いていた。

 『ねぇ、朋子…
世の中にこんなに嬉しくて感動して幸せな事がいっぺんにやって来るって奇跡だよな…』

 『うんうん』

 『この子が幸せに育ってくれたら…
俺、それだけで十分。
俺が生まれて、朋子を好きになって、この子に出会えて……
俺や朋子が生きる意味そのものだよな…
そうだ!名前は未来(みらい)と書いてみくにしない?
未来と一緒に歩んでゆくんだ。
これからもずっと……
どうかな?』

 『未来、未来ちゃん…
いい名前ね』



 ねぇ、どうして私と未来は、佑樹の居ない世界に置いてけぼりにされたの?
貴方が居ないから、私はどんどん嫌な女になった。
もう、昔の私には戻れない……


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