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禁断の果実に口づけを
第15章 メリクリ


 いつものパーキングに車を停めて、いつもの道を歩く。
クリスマスの夜を迎え、昼間よりもだいぶ冷え込んできた。
白い息を吐き、サンタ気分になりながら目的地を目指す。
この角を曲がれば、レトロなアパートが見えてくる。
ドキドキは加速する。
が、見えてきたアパートは何だか静まり返っている様な気がした。
お目当ての部屋からは灯りが見えない。
少しがっかりしながらも、カンカンカンと足音が響く階段を登った。
部屋の前まで来て、ドアチャイムを押してはみたが、伸介が居る気配もなく、その音だけが虚しく鳴り響いた。
勿論、ドアも開く様子もない。

 『やっぱ留守か…』
肩を落とす洋子。
今日は純粋にローストチキンを届けに来ただけだ。
その先への期待が全くなかったと言ったら嘘になる。
その時のシチュエーション次第で、そうなったら…などと思う気持ちにもなっていた。

 『残念ちゃん。
留守なら仕方ないわ』

 ドアノブにプレゼントの袋を掛けて、部屋の前を後にした。
こんな状況も予期はしてはいた。

 していたけど……さ………

 『誰かとクリスマス過ごしているのかも…』
へこむ女心にもなっていく。

 「ふぅー」
と溜息をつくと冷たい外気は白い息に変えてゆく。
澄んだ夜空を見上げれば、冬の星座がキラキラと頭上を輝いていた。

 「切ないねー」
と独り言が自然に口から飛び出した。



 切なくて寒いね。
シングルベルは……



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