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禁断の果実に口づけを
第15章 メリクリ
「へい!お待ちどうさん」
出来たラーメンが洋子の目の前に届き、その丼ぶりを見て驚く。
チャーシューがラーメン丼ぶりの淵に綺麗に並べられており、向日葵の大輪の様にチャーシューの花を咲かせていた。
真ん中には味玉を半分に切り、目玉の様にデコレーションされている。
海苔はお髭または口の様に置かれ、両脇にはほっぺに見立てたネギ。
可愛いとは言い難いがオヤジの優しさが篭もる一杯のラーメン。
洋子はその丼ぶりを見てクスクスと笑う。
「姉さんの笑顔は人を朗らかにさせんな。
そんな笑い顔はうちの死んだかみさんを思い出す」
「……奥さん亡くなったんですか?」
オヤジはコクリと頷き、『冷めたら不味くなるからその前に』と洋子に声を掛けた。
洋子も『ハイ』と返事をし、ラーメンを啜る。
『やっぱり、美味しいわ』洋子がそう言うとオヤジはニコッと笑う。
「わしがもっと早く、人に喜んで貰える仕事に就いていたら、命を縮める事もなかったろうによ……
あいつには苦労を掛けてばかりでした。
若い頃っていうのは、ハッタリかましていきがりたいんです。
それが板についちまうと、とことんそのまんまで生きたくなっちまう。
女は黙ってついてくるもんだと勝手に決めつけて、結局はこっちが置いてけぼりをくう羽目になった。
自業自得だなぁ。
もっと早くに気づいてやるべきだったなんて、男の身勝手なとこ。
言訳の代わりに真っ当な人生ってもんを目指す事にしました。
一杯のラーメンでも、『美味かった』って言われる人生の方が遣り甲斐がある」