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禁断の果実に口づけを
第15章 メリクリ


 「ここのラーメンは最高に美味しいです。
頑固な私がこの味を恋しがるくらい、本当に美味しい!」

 『この人にも自分を変える様な出来事があったんだぁ…』

 洋子はオヤジに微笑む。
ラーメンを啜り、温かい気持ちになっていった。


 「その美味いラーメン、俺にも。
おやっさん」

 洋子の後ろから声が聞こえた。
ドキッとする聞きたかった声だ。
その声がする後ろを振り向くと、そこには伸介が居た。


 「もっとつめろよ、洋子。
俺が座れねーよ!
お前場所取りすぎなんだよ!」

 この憎まれ口が優しいトーンに聞こえる。
でも、今日の伸介はいつもと違って見えた。
上品な黒いコートにチラッと見えるネクタイ。
履いている靴は革靴。
どこから見ても上品な紳士の服装。

 「えっ?あっ、どうして!?」

 「何、鳩が豆鉄砲食らった顔してんだ?
お前のテリトリーの狭さに笑える。
やっぱ、ここに居たか」

 「だって、留守だったし…」

 「俺にも付き合いっていうのがあるの。
会社の忘年会や創立記念やらを一緒くたにしてクリスマスパーティーなんてもんを都内のホテルでやるっていうから、ジーパンじゃ行けねーだろ?
仕方ねぇーから、一張羅着てそれに行ったんだ。
ホテルなんかの気取った料理より、おやっさんのラーメンの方が俺の口に合う。
飲んだ後のラーメンはまた美味い。
食べたくなるんだ」


 オヤジはラーメンを作りながら洋子と伸介のやり取りを微笑ましい笑顔で見ていた。


 「へい、お待ちどうさん」

 「おやっさん、今日のラーメンはかなり盛ってんな!」

 伸介にも洋子と同じラーメンが届く。

 「メリクリだからね。
今日は」

 オヤジは笑う。
伸介と洋子も笑った。

 「メリクリだよな。
日本人にはあんま関係なくね?
でもまぁいいっか!
美味いもん食べる時にはそれなりのイベントがつきもんだよな。
なっ!洋子」

 「あっ、あ、うん」







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