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禁断の果実に口づけを
第16章 砂の城
クリスマスが終われば、あと数日で仕事納めを迎える。
営業をしていれば、年内に成績を上げて楽々と新年を迎えたいという欲もある。
週明け一番に良い成績を上げたのは朋子だった。
『風間健さんからの振込が確認出来ました』と事務員が朋子に報告する。
『有難う御座います』と事務員にお礼を言い、成績を上げる朋子。
どこか誇らしげで成績ランキング女王の風格を醸し出す。
「おめでとう。朋ちゃん」
「有難う御座います。晴美さん」
晴美のグループは朋子に『おめでとう御座います』と口々に言い、拍手をする。
みんなペルソナ(仮面)の笑顔で本心を隠していた。
他人の成績を自分の事の様に喜べる人なんて、この営業所には居るはずもない。
『悔しい!どうして、あの女ばかり…。どうやって成績上げてんのかしら?まさか……AVですか?』という僻み根性は、朋子以外のみんなが口に出さないだけであり、そういうとこは賢い大人になるのだ。
正直な気持ちは敢えて隠し、陰湿なスパイラルの中で嫉妬の炎をメラメラと燃やす。
幸せなクリスマスを過ごした洋子はそんな雰囲気にも鈍感になっていた。