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禁断の果実に口づけを
第16章 砂の城
夫婦の寝室はもうとっくに別々となっていた。
寝る為だけに帰って来る部屋のドアを健は開ける。
輝の冷めた目が健の瞼に焼きついていた。
自分は息子に対して愛情を注げてなかった事に、今更ながら気づかされる。
まだ十六歳の我が子をそこまでにしてしまったのは、不甲斐ない父親である自分に責任がある。
自分が十六歳だった頃、裕福ではないがそれなりの家庭であり、育ててくれた両親の仲は特別に良かったわけではないが、離婚の[り]の字すら無縁の夫婦だった。
よく、五つ上の兄が買っていたエッチな雑誌や男性ファッション雑誌をこっそり読んでいた。
兄がバイトして稼いだお金でデートや大学に着てゆく洋服などを買い、ファッション雑誌に載っているモデルを気取ってお洒落をしていた。
そんな兄の姿に憧れだった。
気前のいい兄は、まだまだ着れる洋服を健にプレゼントしたり、着こなしをアドバイスしてくれた。
初めて出来た彼女が健に洋服を選んで欲しいと言われて、デパートに行った時、センスが良く、とても似合う服を選び、凄く喜ばれた。
健自身も周りからお洒落だと言われ続けてきた。
そんな事もあって、自然とアパレル業界の道を目指す様にもなっていく。
それなりに夢に向かっての努力もした。
そんな昔を思い出しながら、ベッドに仰向けに寝転び、天井を眺めた。
背中に伝わる冷たい感触は、今見ているこれが現実だという事を悟らせた。
目を逸らす事は、決して許されないのだという事を言われている様な気もした。
「愚かだ。
どこでボタンを掛け違いたんだ!
俺は裸の王様だ。
本当に愚かだ!!」
独り言のように呟きながらも、自分のしてきた事に潔く清算をし、一人息子の輝といつか向き合える親でいようと健は決意を固めていた。