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禁断の果実に口づけを
第18章 女の本性
『倉橋さん、待ちなさい!』と洋子は声を掛けたものの、これ以上この場に居させて、無駄に優美子を刺激し、火の粉が振りかかる事も恐れた。
守りたくても守れない現状を叩きつけられたのなら、せめてこれ以上のダメージを受けぬ様、鎮まる時を待つしかない。
一瞬、優美子が口元を歪ませ、ゾッとする様な笑いをしたのを洋子は見逃さなかった。
『フン』と小馬鹿にした様に鼻で嗤う仕草を抑えたラスボスさながらの余裕な笑みに悪意さえも感じていた。
最初からこうなる事を予想し、ロールプレイングゲームを楽しんでいたのではないかと洋子も推測し始めていた。
それでも、こちらの失態は誠意を見せて謝る事くらいしか、他に術はない。
「倉橋の失礼をどうかお許し下さい。
風間様のお怒りはごもっともです。
本当に申し訳ありません」
洋子は優美子にひたすら謝るしかなかった。
「びっくりしますね。
自分のした事に反省もなく、開き直り、挙句、悪たれをついて都合が悪くなると逃げ去るって……
全く、どういう人なんでしょうか?倉橋さんって!!」
優美子はあからさまに朋子を皮肉った。
「本当に申し訳ありません」
「お話になりませんわね!」
ヤレヤレ顔のキツイ口調で洋子に言う優美子。
いくら美人でも、陰湿な気持ちで人を嘲笑う人間は不気味で恐ろしい形相になるのだと洋子は痛感した。
こんな時に所長が居なくて自分が対処しないといけないなんて、本当についてない仕事納めだ。
つくづく自分のタイミングの悪さを恨んだ。