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禁断の果実に口づけを
第18章 女の本性
泣きながら応接室を飛び出した朋子。
「どうしたの!朋ちゃん!!」と心配を装いながらも、白々しく声を掛けてきた晴美をよそに、自分のバッグを取ると何も言わずに営業所も飛び出した。
朋子の後を追い掛ける晴美。
顔がにやけてしまう。
「朋ちゃん!!朋ちゃん!!」と声を張り上げて呼び止めた。
駐車場のある出口の扉の前で晴美は朋子の腕を掴み、動きを止めた。
「何があったの!?」と晴美が聞いた瞬間、「わぁー」と大声を上げて泣き喚く。
「もう、どうしたのよ!」と朋子を抱き抱えて、いかにも私は心配してますよのポーズは崩さない。
朋子は泣き崩れてゆく。
「朋ちゃん?」
背中をトントンと優しく叩きながら、事の真相を探ろうとしていた。
細川から晴美の元に、経理の横澤を寄越し倉橋朋子に揺さぶりを掛けるという連絡は入ったが、まさかサプライズで優美子が来るなんて思いもしなかったからだ。
晴美にとっては、横澤が来るだけでも面白いと思っていたのに、優美子が現れた事で、更に事が大きく動き、予想以上の展開になった事でワクワクしてしまう自分を抑えるのに必死だ。
自分の腕の中で朋子を抱き締めながらも、心にどす黒い感情を上手く隠す。
『今は、朋子を心配する先輩を演じないとね…』と自分に言い聞かせていた。
その横を洋子に見送られながら、優美子が通った。