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禁断の果実に口づけを
第19章 サヨナラの訳


 仕事納めの夕礼前には所長が帰ってきていた。
あれから……
洋子はずっと心配顔を作りながら朋子の事を聞いてくる輩達の質問攻めにあっていた。
洋子は『所長が帰り次第、判断を仰ぐ事ですから』の一点張りを通す。
これ以上騒ぎが大きくなる事を恐れたからだ。

 実際、こうやって聞いてくる人間が、本心から倉橋朋子を心配しているなんて思えない。
人のスキャンダルを喜ぶ輩達の相手にうんざりもしてきた。
テレビでマスコミが騒ぎ立てる芸能人の不倫騒動と変わらないではないか。

 いや、輩達はそれが身近で起こったから楽しくて仕方ないのだ。
詳しい情報を知り、年末年始の退屈しない話題作りくらいにしか思ってないのも見え見えだった。

 洋子自身だって、所長にありのままを話さないといけない任務がある。
一言一句漏らさね様に頭を整理させたい。
予め、倉橋朋子のお客様のクレームで大変な事が起こった事はメールで知らせていた。
そのメールを見た所長の柿沼吾郎(かきねまごろう)は、会議が終わり次第、飛んで帰ってきた。
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