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禁断の果実に口づけを
第19章 サヨナラの訳
所長の柿沼はさっさと夕礼を済ませ、営業所の社員達を極力帰そうとした。
柿沼にとって事の成り行きを知らないのは好都合だった。
納得のいかない者達が柿沼に詰め寄ってきたが、『詳しい事は秋山代理から聞かないと分からないんだ』を押し通せたからだ。
夕礼後は素早く洋子を呼び出し、先程の応接室で詳しい事情を聞いた。
「なぜ、契約者の了解を取らないと話せないを代理も倉橋も押し通さない」
「通せる状態じゃないからです」
「契約者の奥さんなら、旦那に契約内容を聞けばいいだけの話じゃないか!」
「探りを入れられながら、倉橋がご主人と不倫している現場まで押さえられた写真を見せられてもですか?」
「それでもだ。
不倫してまで契約を取れとも言ってない。
倉橋が勝手にやった事だろ」
「確かにそうですが…」
「同情の余地があるか?
倉橋が不倫して、仮にその旦那と企んで横領に手を貸したなんて事まで会社が責任負える事なのか?」
「……それは」
「とにかく、契約者にはありのままの出来事を話すしかないだろう。
第一、倉橋とは連絡取れないんだろ?」
洋子がいくら朋子に連絡しても携帯は繋がらない。
それも想定内だったが、朋子が居ないと真実が何処にあるのかすら分からない。