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禁断の果実に口づけを
第19章 サヨナラの訳
「それでも、本当のあなたを見せて欲しかった。
全て曝け出したあなたに寄り添いたかった。
あなたと結婚出来て妻になれた時……
世界で一番幸せな女になれたと思うくらい、あなたを愛してました。
あなたが浮気する度に心を抉られて、何度もズタズタに切り裂かれて……痛くて辛くて、恨みを溜め込んで……本当の優しさや笑顔も奪われてゆきました。
浮気を繰り返すあなたに失望したわ。
もう、無駄にあなたに期待をするのは辞めようって!!
でもね、あなたが本気で愛した倉橋朋子だけは、憎くて憎くて堪らなかった。
ある日、リビングのソファですっかり眠り込んでしまったあなたは、寝言で『朋子…』と名前を呼び、優しく微笑んだんです。
あなたのそんな顔も忘れていたわ。
私は自分の本当の笑顔を失い掛けていたのに皮肉よね…。
細川と不倫しときながら、言えた義理でもないんだけどね。
人を恨んで歪んゆく自分を表に出さない様生きるには、一時でもその苦しみを忘れさせてくれる人に温もりを求めてしまうもんなんですよ!
不倫なんて、馬鹿な男や女が身勝手な愛を主張して、逃げ道にする卑怯者のする事だって軽蔑していました。
そんな人間は醜いと罵ってました。
それなのに……そんな人間に成り下がって、背徳の恋に本気になってしまうなんて…………
馬鹿を通り越して救いようないわね。私も…」
壊れた夫婦が、最期の最期に心に溜まっていた蟠りを吐き出し、お互いを素直になれた瞬間だった。