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禁断の果実に口づけを
第19章 サヨナラの訳
真雪は頼んだグレープフルーツサワーを飲みながら焼き鳥を摘んだ。
「やっぱ、ここの焼き鳥は最高!
健ともこの間この店で飲んだのよ。
あいつさ、ジジ臭いとこあるから焼酎の梅干し割が一番好きなの。
知ってた?」
「いいえ…。
私と会う時はお酒は飲まなかったんで…」
自分がホステスをしていた時に、お客で来ていた健が飲んでいた酒は高級なブランデーやシャンパンばかりだった。
逢瀬の時は、人目を気にせずに過ごせるラブホテルがお決まりのコース。
未来が居れば、夜なんて会えない。
夜家に居る母親になる為、今の仕事を選んだのだから。
だから、二人っきりでお酒を飲むデートなんてした事もない。
「あらそう。
お酒を飲んではしゃげない恋も辛いわね…。
なら、今夜はグッと飲んじゃいなさいよ!」
「はぁ…」
真雪と同じものを頼んだ朋子も勧められるがまま飲んだ。
「お酒はね、あなたの緊張と心をほぐしてくれるわ。
ねぇ、お嬢ちゃんはうさぎのコート着てくれてる?」
「あっ、はい。とても気に入ってます」
そんな事まで知ってるんだ…。
未来は健から貰ったプレゼントを凄く喜んだ。
今日はそれを着て実家に行った。
『お婆ちゃんにうさぎちゃん見せる』と自慢げに言うのだ。
あの子のお気に入りなのに保育園には着ていかない。
『白いうさぎちゃんが汚れちゃうから、特別な日だけ』と凄く大事にしている。
「私のデザインだからね。当たり前ね。
健が相手の子供の世話まで焼いたのは初めてよ。
だから、あなたに本気になっちゃったのかもね?
あの人ね、幅広く人脈を作る割には、腹を割って話が出来る人間が私くらいしか居ないのよ。
そんな健の姿もずっと見てきたわ。
器用な様で不器用。
だから放っておけなくてね。
私ね、こんななりをしていても人の心に敏感なとこあるのよ。
だから、あなたの気持ちを否定しない代わりに、優美子さんの気持ちも理解出来るわ。
あんな野生猿に引っ掻き回されて、ホントお気の毒ね!」
そう言って笑う真雪に、朋子の心に安心出来る気持ちが湧いてきた。
朋子自身も真雪に心を徐々に開いていく。