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禁断の果実に口づけを
第19章 サヨナラの訳
 

 優美子を成田のホテルまで送り、来た道を戻る健。
今日一日で起こってしまった事を健は頭の中で振り返る。

 心を裸にして優美子と語り合えた。
離婚を互いに考え、その不満を最期の最期でぶつけ合って、自分の足りない所やゲスな部分を浮き彫りにされ、気づいていながらも、改めずにいた自分を悔いていた。

 本来なら妻である優美子を、一番愛して大事にしなくてはならなかったはずなのに、優美子自身を変えてしまうほど傷つけていた事に心が傷む。

 気づくのが遅すぎた。

 世間知らずのお嬢様そのものだった優美子に不満を持ちながらも、それを口にせずに放っておき、最期には不倫をさせるくらい、寂しい思いをさせていた非は自分にあるのだと素直に認めていた。

 優美子との別れが具体化され、これから起こりうる未来を予想すると波乱に満ちた茨の道を覚悟しなくてはならい。
湾岸線をひたすら走り、輝を二回しか連れて行ってやれなかったディズニーランドを左に見て、美しくライトアップするイルミネーションすら、哀しみの色を滲ませた映画のエンドロールの様にさえ観えた。

 目の前に明らかに重量オーバーに見えるトラックが蛇行しながら走っている。
それを避ける為、隣の車線に移ろうと方向指示器を右に出し、アクセルを踏み込み移ろうとした瞬間、トラックは健の車を目掛けて勢い良く横転した。

 ほんの一瞬の出来事だった…。
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