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禁断の果実に口づけを
第20章 道標
 
 ーーどうか助かって欲しい。
別れを言われてもいい。
もう一度、健に会えるのなら……
どんな結末を迎えてもいいから……
どうか、どうか健さんを助けて下さい。
夫の佑樹が亡くなった時から、神などこの世に居ないのだと運命を呪い、神頼みなどは弱い人間が縋る為に創り出した幻想に過ぎないと思い、信じなくなっていた。
でも、今は縋ってでも最悪な状態から回避して欲しいと願っていた。


 【カタン】と鍵が開き、ドアが開く音が聞こえて、真雪が部屋に入る。
もう夜が明けて朝を迎えていた。
朋子は玄関に駆け寄る。
真雪の泣き腫らした目を見て、余り良くない結果である事は悟れた。
そんな姿を見て、急かす気持ちにはなれず、むしろ聞く事の方が怖くなった。

靴を脱いで静かに朋子を見上げる真雪。

 「朋子さん、コーヒー飲める?」

 唇が震えていた。

 「……はい」

 「じゃあ、淹れるわね。
出来るまで座って待っていてくれるかな……」

 「はい」


 真雪はお湯を沸かし、ドリップコーヒーを淹れた。
コーヒーの香りが部屋に広がった。
コーヒーを淹れながら、涙でぼやけた景色の中で朋子に伝える言葉を探していた。

 

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