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禁断の果実に口づけを
第20章 道標
お盆にコーヒーのカップを乗せて、ソファに座る朋子の元に運んだ。
「冷めないうちにどうぞ」
一言声を掛け、真雪も朋子の隣に座った。
カップを手に取り、コーヒーを一口飲む朋子。
「ブラックなのね」
「はい」
「健もブラック派だったわね…。
無駄な脂肪分や糖分は取らない。
腹筋パック維持とかみっともない腹の出た親父にだけはならないってさ、見栄っ張りだったな…。
健のお父さんツル禿でね、髪は人一倍気にしていたっけ………。
……ぶつかった衝撃でさ、体にかなりのダメージを受けたみたいで……内臓破裂だってさ………。
でもね、優美子さんや息子さんが見届ける事は出来たみたいよ。
最期は……ちゃんと…健らしく…サヨナラしたんだよ。
ごめんね朋子さん。
あなたには辛いお話になっちゃうけど、健らしいでしょ、そういうところ。
息を引き取った後、涙流したみたいでさ…無念だったんだろうね…‥
……もっと話したかっただろうね……ちゃんと自分なりの責任を取って出直そうとしていたんだと思うわ。
朋子さんともちゃんと話したかったと思う……それも叶わなくて…健が…こんな形で居なくなっちゃうなんて!!」
「あああああーどうして!どうして!どうしてよぉー!!」
「……朋子さん……」
「なんで!!……どうしてそうなっちゃうの!!イヤーイヤー!!
イヤだよ……こんなの!!」
真雪は取り乱す朋子の肩に手を乗せ、涙で言葉を詰まらせながらも……
「うんうん…そうだね…なんでだろうね…辛いね。…辛いよね……でもね、あなたより優美子さんはもっと辛いんじゃないかな……」
『愛する人が最期の時を迎えた時、愛人と妻との違いはこういう事なんだ』と真雪の裏側に隠した遠回しの言葉が朋子の心を突き刺す。