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禁断の果実に口づけを
第21章 カフェオレの追憶
また、ダイニングテーブルの椅子に腰掛け、タバコに火をつける朋子。
洋子の持ってきたカフェオレを見る。
あの女の事だから、伊織にしていたみたいに目を釣り上げて罵倒するかと思った。
マジ意外。
最悪は懲戒解雇ね…。
上等だよ!あんな会社!
上等だよ!!
すっかり冷めたカフェオレのカップを手に取る。
捨てようと思った。
けど、口元に持っていき一口飲んだ。
健さんに会いに行く前は必ず飲んでいた。
こうしてタバコを吸いながら……
もう、あなたは居ない。
プルプルと唇が震え、また涙が流れる。
仕事より考えたいのはあなたの事。
あなたが居なくなった世界の方が堪えるよ。
『朋子……』
あの人に名前を呼ばれた気がした。
振り向いても誰も居ない。
空中に舞うタバコの煙が、一瞬ハートの模様を描いた様に見えた。
「健さん!健さん!健さん!」
愛しい人の名前を呼び、下唇を噛み、目を閉じて涙を流した。
閉じた瞳の奥に健が居た。
『そんな朋子が好きだったんだよ』と語りかけ、別れの言葉を遺した。