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禁断の果実に口づけを
第26章 恋こゝろ

 
 仕事が始まってから、倉橋朋子の件に追われ、それが無事に解決するまでは、伸介には会わないと決めていた。
上手く行かない事があると気持ちをおおらかに持てず、八つ当たりを繰り返してきた自分に反省があったからだ。 
感情に左右されて、呆気無く恋を壊すのが怖かった。
お土産はいつでも渡せる様に車に置いてある。
賞味期限が長いものを選んた自分にgoodjob。
スッキリして穏やかな気持ちで渡せる時が来るはず。

 『会えない時間は愛を育てるとか言うけど、その言葉とは無縁なんだよね。
会えない時間は我慢を強いられる自分を試しているのよね……』

 頭の片隅にはいつも伸介が居た。
仕事中も家に帰ってからもずっとずっと。
もう、ひと月近く会ってない。
普通の恋人なら、マメじゃない男でもメールくらいはするんだろうな……

 そんな洋子は、元旦の日に新年の挨拶をショートメールで送っただけだった。
返信がなかった事が気に掛かった。
それもあってか、あまりしつこくも出来ない。
期待なんかしてない。
携帯を手に取り、履歴を見ても、そこに伸介からのものがないのは、寂しくても仕方ない事と割り切れた。
互いの日常を心配しあえる間柄でもない。

 『フゥ』と深い溜息が出てしまう。
寂しさに負けたら、この恋は呆気無く終わりを告げるだろう。
そう思えば、慎重にもなる。

 自然消滅の可能性も否めない。
でもそれだけは嫌だな……
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