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禁断の果実に口づけを
第27章 警告
頭を下げて、支社長室を洋子と所長の柿沼は出た。
重苦しい雰囲気はこれで解放ではなかった。
唯一の救いは、同じ場所に呼ばれていても別々の車で来ていた事だ。
一刻も早く一人になりたかった。
「秋山代理、申し訳ないが営業所に先に帰っていてくれないか。
夕方には戻る」
柿沼は一言そういうと、車に乗り込み支社を後にした。
洋子も自分の車に乗り込み、エンジンをかけた。
支社長直々の宣告が頭に蘇ってきた。
言訳なんてみっともない事も出来ない。
私は倉橋朋子が風間優美子に証拠を突きつけられた時、『間違いを謝れない女は下品な女』と立派な事を言った。
自分が同じ様な立場になって謝れないのなら、下品な女に成り下がる。
いや、それ以下だ。
私は人を傷つけてきた。
仕事でミスを何度も繰り返し、出来ない川端を嫌った。
私が怒ると、泣きそうになりながらも涙を流さない美しい被害者面の川端を見ていると益々苛めたくなった。
怒鳴っているとスカーッとした。
周りが見えなくなる程エキサイトしながら、醜い姿を晒していたのは事実。
今でも嫌いだ。
苦手だ。
川端伊織は。
いつか風間優美子が言っていたっけ……
『嫌いな人間ほど遠ざけたくなるのに、なぜか気になる』って。
今、やっとその意味がはっきり分かった様な気がする。