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禁断の果実に口づけを
第28章 毒リンゴ
「秋山代理、私、もうそろそろ出ますね。
お客様との約束がありますんで。
これ以上お話しても嫌いな者同士の出口の見えない水掛け論するだけでしょうしね。
安心して下さい。
秋山代理と伸ちゃんの恋愛まで介入は致しませんから。
天地がひっくり返っても、秋山代理と伸ちゃんが成就するなんて思ってませんし、仮に万が一そんな事になったら、その時は必死で伸ちゃんを止めますけどね!」
「片岡さん(伸介)とそんなつもりはありませんよ」
『嘘じゃないけど、嘘をついた気分になった』
「そうですか。
そこまで色ボケはしてないみたいなんで安心しました。
なら最後に一つだけ忠告しておきますね。
秋山代理は、見たまんまでしか人を判断出来ないみたいなんで、終わりも自分でちゃんと見据えて下さいね。
私は秋山代理と伸ちゃんのハッピーエンドは絶対有り得ないと思ってます。
あっ、あと、嫌いな相手に怒りの感情をそのまんまぶつけるって、気持ちいいもんなんですね!
私もスッキリしましたので仕事に行って来ます」
トントンとテーブルで音を立てて書類を揃えてファイリングし、若者が好みそうなお洒落なブランドバッグに入れて、最後は物凄い目力を込めた瞳を洋子に向け、川端伊織は休憩室を出て行った。
すっかり冷めたコーヒーを一口飲み、呆然としてしまう自分に、時間を掛けて軌道修正を試みる洋子。
『面と向かって大嫌いと言われたのは二人目ね。
自覚はあっても堪えるもんね……』
人に恨みを買う怖さが身に染みた。