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禁断の果実に口づけを
第29章 三日天下

 今日一日を振り返ると、慌ただしくそれでいて自分の在り方について鋭い意見で叩きのめされ、全てを受け止めて前を向くポジティブな気持ちになれず、暫く休憩室から動けなかった洋子。
冷めたコーヒーの前で、昼食に買った菓子パンにも手をつけず、考え込んでしまった。

 やがて、外から帰ってきた所員達がコーヒータイムを取る為に休憩室に入って来たので、場所を譲る様に席を立った。
自分の席に戻って、パソコンを開き、集計などをする為にEXCELを開いたが、数字を打ち込んでいても集中出来ずに居た。
そんな時、ご機嫌の笑顔で北原晴美が契約を持って営業所に戻ってきた。
はしゃぐ声が痛々しい。
北原リーダーの動画を送りつけた者はこの営業所に居るんだ。
詮索はしてはいけないと、支社長に言われたが考えてしまう。
川端伊織じゃないのは確かだ。
私に怒鳴られている姿をカメラワークばっちりで映し出す事は不可能だ。
パンクの時もいち早く駆けつけたのは、川端と倉橋。
あの二人以外……。

 『目に見えるものでしか判断しない』
これがヒントなのかしら?
私を嫌いな人間はこの営業所の殆どだとしても、北原リーダーを嫌っている人間は……

 あぁ、川端が言う通り、確かにスキャンダラスな職場ね。
出る杭は打たれる。
いや、打ちのめされるのか。
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