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禁断の果実に口づけを
第30章 ビターなあいつが恋しくて……
バレンタインイベントなんて、自分に似合わなくても、気持ちはちゃんと伝えなきゃ。
スーパーに入り、材料を吟味した。
こんな事をする自分も忘れかけていた。
淡い恋をしていた頃、料理の得意な母親と一緒に作ったチョコレートやクッキー。
姉も参加して、女子三人は甘い匂いのキッチンで、バレンタイン製作に取り組んだ。
父親はしらけた顔で居間で新聞を読んだり、テレビを見ていた。
母はそんな父の為に、私達を指導しながら水羊羹を作っていた。
『お父さんにはこっち』と笑いながら。
出来た水羊羹と緑茶を父に運ぶと不機嫌な顔が徐々に直る。
『お父さん、娘が二人とも嫁に行ったら、ずっとあんな仏頂面なのかしら?』
目に浮かぶ、バレンタインの思い出。
あの頃が懐かしいよ。
久々にキッチンでバレンタイン製作に取り組む、洋子。