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禁断の果実に口づけを
第31章 微睡みの中
洋子が眠りから覚めると、真上に白い天井が見えた。
「洋子…」
声の方向を向くと、心配そうに顔を覗き込む父と母。
「ここは……」
「覚えてないの?
あなた、階段を踏み外して落ちたの。
幸い、見つかるのが早くて大事には至らなかったけど。
右足が複雑骨折しているみたいだから、当分入院になるわ」
「……私………どうして?」
「なんか、片岡さんって方にお届けものをした帰りに、足を滑らせて階段から落ちたって。
最初に川端さんって方が見つけて救急車を呼んでくれたみたいで……」
「……片岡さん?と川端さん?
誰なのかしら?」
「あなたの知り合いでしょ?
川端さんは職場が一緒だって……」
「えっ……分からない……」
「……よ、洋子……もしかして……何も覚えてないのか?」
父と母は分かる。
自分が洋子である事も。
でも、どうして怪我をして病院にいるのか?
片岡とか川端なんて名前を言われても、分からないものは分からない…。