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禁断の果実に口づけを
第31章 微睡みの中


 洋子が病院に運ばれた時、MRIなどで脳波などの検査をしたが異常は見当たらなかった。
詳しくもう一度検査もしてみたが、特に異常は見当たらなかった。
恐らく、事故による一時的な記憶喪失の可能性や心因的な事が原因で、思い出したくないものを拒否してしているのではないかというケースが予想された。
暫く、入院しながら経過を見る事になる。

 今の営業所に配属される前までの記憶はあった。

 医師に云わせれば、『ここ最近か、数年くらい前の記憶が消えてしまっているみたいですね。
事故に遭われる前に、物凄いストレスや精神的なショックを受け、今回の外的ショックが加わった事によるものではないかと。
ある日突然思い出す事もあるし、ゆっくり療養しながら診てゆきましょう……』との診断が下された。


 「脳に異常なくて良かったわ!
記憶か無くなっても、たった数年でしょ?
そのうち何かのきっかけで思い出すかもしれないし、生活にはそんなに支障ないわ。
今は、体を治す事だけ考えなさい」

 「あぁ、暫くゆっくりしろ」

 そう交互に言って、父と母は私を慰めるけど……
辛い、苦しい、悔しいの中にも、忘れてはいけない大事なものがある様に感じた。
無にしてしまうのが惜しいくらいに……

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