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禁断の果実に口づけを
第31章 微睡みの中
「……あとの事は伸ちゃんが会いに来た時に話して貰えますか?
……私が意地悪をして邪魔してしまったんです。
本当にごめんなさい!」
「川端さんが邪魔したくなる何かがあったんですね?」
「……はい。
卑怯な事をしました。
すみませんでした。
伸ちゃん、秋山代理を洋子って呼ぶんですね。
代理がいつも車を停めてあるパーキングにも行って、代理の車をマンションの駐車場まで返してました。
あっ、これ、秋山代理の車の鍵です。
会った時に渡してと伸ちゃんから預かってきました
洋子の手のひらに車の鍵を置いた。
「あっ、有難う。
……会ってみたいです。
その方に。
お礼もちゃんと言わないと。
私はその方に何か伝えたかったのですかね?」
「多分……」
「頭が今、混乱してるみたいです。
よく分からないけど、何か大事な事を……言い忘れているような……」
「大丈夫ですか?」
「……はい」
「私はこれで失礼します。
伸ちゃんに会えば、通じるものがあるかもしれません」
「有難う御座います。川端さん」
「早く、お元気になられて下さい」
そう一言残すと、伊織は病室から出て行った。
洋子が伊織を見たのはこれが最後だった。