この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実に口づけを
第31章 微睡みの中
「私もかなり酷い事をしてしまったんです。
辛くて、悲しくて、怒りの矛先すらも見えなくなる程……
でも、今回、こんな事になってしまって恐ろしくなったんです。
私は……」
言葉を詰まらせながら、泣いている伊織。
「……私が記憶がないのは、きっと、あなたをそこまで追い詰めた罰なのかもしれません。
何だかそんな気がします。
多分、私は記憶を抹消してしまいたくなる程、酷い事をしてきたんでしょうね。
それが事故の直後に起こったのなら理解出来ます。
あなたの涙が教えてくれた気がします。
本当にごめんなさい」
「秋山代理……」
「何となく、そんな気がするんです」
「伸ちゃんは落ち着いてから秋山代理を見舞うそうです。
私からはそれ以上は……」
「……分かりました。
もう、これ以上は川端さんは追い詰められませんね。
泣かないで下さい。
あなたを傷つけていた事は十分伝わりました。
幸せになって下さいね。
私のした事は許して貰えますか?」
「……はい」
「あなたとご結婚される方は幸せですね。
過去に、私とあなたの間にどんないざかいがあろうとも、助けてくれた。
会いにも来てくれた。
綺麗なお花も下さった。
それと同じ事を私が出来たか……
人に気持ちを伝えるのは難しいですね。
どうやら私は苦手な様です」