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禁断の果実に口づけを
第33章 ピース
記憶は曖昧なままの状態が続いていたが、体の方は回復していった。
松葉杖をついて歩くリハビリをする事で、一人で売店に飲み物を買いに行けたり、中庭にも行く事も出来る様になった。
何故か、あの日出会った片岡伸介が頭から離れず、自分の中の『まさか!?』を辿ってしまう。
ブラックの缶コーヒーを買って、天気の良い日は中庭のベンチに腰掛けまだ蕾のままの桜の木を眺めた。
『何だか……記憶を失い、療養する事により、ゆっくりと自分の時間が流れてる。
考える事は失くした記憶やあの人の事ばかり……
こんな時間が幸せに感じてしまうのは何故だろう?
このままでいいと思ったり、このままではいけないと思ったり……
自分が過去に酷い事をしていたのは気づけた。
もっと知るのが怖かったり、目を背けたら大事な事もこのままお蔵入りしてしまう気もする。
本当にもどかしいーー』
中庭の帰り道にまた売店に寄り、暇潰しに雑誌や本などを眺めていた。
そんな時、ある週刊誌が目についた。
表紙を飾るのは高瀬まひる
《高瀬まひる 初めての濡れ場 彼女の恋愛観》
洋子は気になり、その雑誌をレジに持って行った。
『私、この女優好きだったっけ?
でも、何となく気になる………』