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禁断の果実に口づけを
第33章 ピース
部屋に帰り、棚に置いてあるピンに『ただいま』と心で挨拶。
早速買った雑誌を捲りだす。
高瀬まひる、来年公開映画で花魁役に挑戦。
初のヌードに濡れ場披露。
ファン驚きの声かぁ………
高瀬まひるのインタビュー記事を読む洋子。
『初のヌードと濡れ場を演じる心境はどうですか?』
私にこの仕事が来た時には驚きと覚悟を決める葛藤の日々でした。
人前で肌を晒す事や大胆な濡れ場のある台本を見た時、震えましたし、涙も出ました。
『それでも、引き受けた理由をお聞かせ下さい』
私は女優という仕事を選んだ過去を思い出したんです。
十八歳でオーディションを受け、この世界に入った時、実は恋をしてました。
やっと、夢が叶い、二つの大事なものが私の手の中にありました。
でも、この仕事に夢中になるにつれ、すれ違いになってゆく恋が段々辛くなったんです。
結局、私が選んだのは仕事です。
別れを告げたのは、ドラマでキスシーンを演じる事になった時、例え演技でも彼を裏切り続けてゆく方が苦しいと思う様になりました。
悩みに悩んだ結論でした。
だからかな?
自分を後押ししてくれた恋に報いたいと思うんですよ。
私は女優として生きる道を決めたんですから……
記事を読みながら、花魁の衣装を着て、悩ましげな笑みを浮かべ、煙管を吸う高瀬まひるの巻頭写真も見た。
『同性の私から見ても綺麗だわ……』と洋子は素直に思った。