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禁断の果実に口づけを
第38章 素

 青田は山車が通り過ぎるのを待ち、洋子の手を引いて歩き出す。

 「手を離さないで下さいね。
少しゆっくりしませんか?
あっ、そうだ!
コーヒーでも飲みましょう。
それともお酒がいいかな?」

 「……青田さんに……ちゃんと話さなきゃいけない事があります。
だから、お酒は抜きで」

 「あぁ、そうなんだね。
ちゃんと僕も洋子さんの話を聞かなきゃね。
この川沿いを歩いて行くと、昔ながらの喫茶店がありますよ。
コーヒーも美味しいし、小倉のパンケーキも絶品です。
あんこが嫌いじゃないなら、食べませんか?」


 「はい……」

 
 一歩先を青田が歩き、洋子もその背中を眺めてついてゆく。
カタカタと下駄の音が響く。

 「おっ、今宵は満月ですね。
綺麗なお月さんだ」

 青田がそう呟いたので、洋子も顔を上げて月を眺めた。


 欠けた部分一つない、綺麗なまん丸お月さんが頭上に輝いた。

 フワッと夏風が優しく吹いて、洋子の頬を掠める。



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