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禁断の果実に口づけを
第40章 生きてくってこと
「ベッドにいこう……」
卯月の胸の中でコクリと頷く。
洋子の手を握り、ベッドルームへと誘う。
ドアの扉を開けると、モアっとした夏特有の熱気が部屋中を支配する。
直ぐに卯月はエアコンのスィッチを入れて、部屋の温度を下げた。
窓際にはセミダブルベッドが置いてある。
上半身裸でショーツ一枚を纏った姿の洋子。
恥じらいと緊張が交互しながらも、部屋の中を見渡した。
モノトーン系の家具で統一された寝室は落ち着いた雰囲気を醸し出す。
本棚には沢山の建築関係の本がびっしりと置かれていたり、家の模型やプラモデルなども飾られていた。
そこに、伏せた写真立てを見つけた。
多分、亡くなった奥様が写ったものだろな……
家族の幸せな時間を撮った想い出のものなんだ。
片付けようとしても、片付けられずにいた。
私が来る前に片付けようとしていたのを忘れていたかしら?
いずれにしても、私への気遣いからだ。
いい大人ですから……
触れません。
あなたの過去に嫉妬もしません。
過去があるから現在のあなたが居る。
そっと、洋子の背中を抱きしめる卯月。
大丈夫。身を任せる決意は固まっている。
これで本当に……
自分の心に棲む伸介とは決別するのだと言い聞かせた。