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禁断の果実に口づけを
第1章 秋山洋子


 「……じゃあ、倉橋さん、責任を持って指導お願いします…」

 洋子は一度怒ると、直ぐに態度は変えられない。
苦虫を潰した様な顔で二人を見た。

 堂々と威嚇の姿勢の朋子とは対照的に、下を向いたまま涙を堪える伊織。


 『一層、泣いてくれた方がまだ可愛げがあるのに‥‥
二十代半ばで、若くて綺麗なだけの女で、腰掛けくらいにしか考えてないからミスすんだよ!!
ーーあーあ、腹立つ!!ーー
倉橋もちょっとくらい仕事が出来るからっていい気になんなよ!』
 
 洋子の心の朗読は続いていた。


 「分かりました!」

 強い口調で返事をし、ツンとした顔の朋子。
暗い顔をした伊織は、洋子に頭を下げて席に戻る。


 洋子はその姿を見ていた。
そして冷静さを取り戻し、周りを見ると、冷ややかな空気が自分を包んでいた。


 『どいつもこいつも‥‥‥
仕事ってもんを分かってない!!

 私は、至らない新人の川端に喝を入れただけじゃない!
注意されてもミスを繰り返すバカに、仕事の常識ってやつを教えてあげてるだけよ!

 あーぁ、気に入らない!』

その冷ややかな空気を無視する様に、パソコン画面に視線を落とす。


 『はぁ‥‥……やってらんない!!
バカ女共が!!』
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