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禁断の果実に口づけを
第9章 デキる女ー倉橋朋子の秘密

 「明後日、例の資産運用の設計書を届けるわね。
大体、一口百万から始められるけど、利率がいいから、一千万くらい預ける人も多いわ。
予定のないお金は眠らせて増やすの。
賢い人の選択よ」

 最後にきっちり自分の仕事の念を押す朋子。

 「一千万かぁ…」

 「健さん次第よ」

 ガツガツいかずにやんわりと言う朋子。

 自分から健の唇にキスを落とし、ニコッと笑って部屋のドアに手を掛ける。

 このドアを開けて歩き出せば、愛人の時間が終わり、現実へと帰る。

 二人は時間差で車に戻り、朋子は一足先にホテルを出て高速に乗った。


 『疲れたから、今日は直帰しょう…』

 車を運転しながら、ハンドルを握る指を見る。
左手の薬指に光るエメラルド。

 インターを下りて、コンビニに寄り、指輪を外す。 

 『こんな高価なものは未亡人の指には不似合い。
元々、私の指はこんなものは求めてない。
だけど………捨てられる程、格好いい女じゃない』

 指輪をバッグに仕舞い、コンビニで娘の好きなお菓子を買う。

 『イヤな母親ね…
疚しい気持ちを誤魔化すみたいで…』

 車に戻り、営業所に連絡し、車を走らせた。  


 いつもより早めに、娘の未来(みく)を迎えに保育園に向う。
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