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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第2章 連れられて身代わり
(お姫様の嫁入りなんて、てっきりパレードやら花火やら豪華絢爛とやるのかと思ったのに。平民が思うより王族の結婚はこうコソコソ行うものなのかしら?)
城で何が起きようと無関心で、それどころじゃない生活を送ってきた身としては、上流貴族の暮らしに夢を見たかったから少しがっかりというか。確かに実際、自分なんかがたくさんの人たちにお姫様お姫様と呼ばれたら、いたたまれない気持ちに消えたくなるだろうから、お姫様初心者の私にはちょうどいいのかもしれないけれど。
だからといってまるで晩飯の肉でも運び込むように裏口から歓迎されるのも複雑な気持ちだ。
「国王は訳あって居住スペースがこちらの別棟でして、正門から入るよりは裏からの方が近いのでこちらに来ていただきました。ささ、中にお連れしますのでどうぞこちらに」
「は、はいっ」
少年はさっと踵を返して歩き出してしまうので、焦って一歩目を踏み出すと、ほぼ同時にドレスの裾を踏んずける。
「きゃあ」
「姫様!」
履きなれないヒールに着慣れない足元を覆うほどのドレス。
(履いた時からガクガクしてたけど、今このタイミングで……!)
目の前の天使のような少年の後頭部めがけて体が倒れるのを、力強い腕が制した。
「姫様、お気をつけください」
「ふあ、は、はい」
後ろから護衛の一人が腰を掴んでくれた。移動中はリジーとの話に夢中で全く見ていなかったが、その素朴だが精悍な顔つきの騎士に目を奪われる。
兵士の装備品の上からでも分かる分厚い胸板。自分の腰に回った太い腕にカアッと耳まで熱くなるのを感じて、パッと離れた。
私が住んでいた辺りでは栄養を満足に取れないか、または食べすぎで太っている。兄は線が細く私よりも儚げな印象で、比べ物にならないくらい逞しい男性の体をこんなに間近で見たことがないから、つい狼狽えてしまう。
「ご、ごめんなさい」
「いえ、」
「ああ、姫様! すみませんでした。僭越ながら僕が腕を貸しましょう」
あわや頭突きをかましそうだったことを知らない少年は胸を張ってその腕を差し出した。おずおずとその腕を借りて、護衛の男に視線をやる。
城で何が起きようと無関心で、それどころじゃない生活を送ってきた身としては、上流貴族の暮らしに夢を見たかったから少しがっかりというか。確かに実際、自分なんかがたくさんの人たちにお姫様お姫様と呼ばれたら、いたたまれない気持ちに消えたくなるだろうから、お姫様初心者の私にはちょうどいいのかもしれないけれど。
だからといってまるで晩飯の肉でも運び込むように裏口から歓迎されるのも複雑な気持ちだ。
「国王は訳あって居住スペースがこちらの別棟でして、正門から入るよりは裏からの方が近いのでこちらに来ていただきました。ささ、中にお連れしますのでどうぞこちらに」
「は、はいっ」
少年はさっと踵を返して歩き出してしまうので、焦って一歩目を踏み出すと、ほぼ同時にドレスの裾を踏んずける。
「きゃあ」
「姫様!」
履きなれないヒールに着慣れない足元を覆うほどのドレス。
(履いた時からガクガクしてたけど、今このタイミングで……!)
目の前の天使のような少年の後頭部めがけて体が倒れるのを、力強い腕が制した。
「姫様、お気をつけください」
「ふあ、は、はい」
後ろから護衛の一人が腰を掴んでくれた。移動中はリジーとの話に夢中で全く見ていなかったが、その素朴だが精悍な顔つきの騎士に目を奪われる。
兵士の装備品の上からでも分かる分厚い胸板。自分の腰に回った太い腕にカアッと耳まで熱くなるのを感じて、パッと離れた。
私が住んでいた辺りでは栄養を満足に取れないか、または食べすぎで太っている。兄は線が細く私よりも儚げな印象で、比べ物にならないくらい逞しい男性の体をこんなに間近で見たことがないから、つい狼狽えてしまう。
「ご、ごめんなさい」
「いえ、」
「ああ、姫様! すみませんでした。僭越ながら僕が腕を貸しましょう」
あわや頭突きをかましそうだったことを知らない少年は胸を張ってその腕を差し出した。おずおずとその腕を借りて、護衛の男に視線をやる。