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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第5章 おうさま

「ええ、何言ってんだいこの子は。見たことはないけどねえ、あたしらの生活が豊かになったのは国王様のおかげだからねえ。見た目が怖いとか言ってたらバチがあたるよ」

「はあ……他の国だと結構恐ろしいって噂が……」

「ああ、アンタ他所から来たのかい。まあ、あたしらは生活が苦じゃなけりゃ引きこもっててもいい王様だし、顔見せてても重税課すようなら悪い王様だからね」


確かにこのメイドたちの言うことは理解できる。私だって今まで物乞いしていた時は国王の顔や姫様のことなんか知らなかったし関係なかった。実際生活に関われば国王様の印象というのもあるのかもしれないが、そんな気づけるほどの変化はルバルドではせいぜい物乞いや孤児が増えたくらいのものだ。つまり、自国の場合は悪化しているのだろう。


「あ、王様が顔を出さなくなってから国が豊かになったって」


そんな話を聞いた気もする。メイドたちは頷いた。


「まあ最初は分からなかったけれどね、今までは税金税金で搾り取られてたのが、急に緩くなって、ここ十年で国の補助だ何だが随分増えてねえ」
「働き手を育成するためとかで、城で働くのは一年間って決まってるからあたしらみたいなのも雇ってくれるしねえ」
「聞いた話なんだけど、それで人件費抑えて、王様たちも全然金使わないから税金上げなくていいみたいよ」
「あらまあ、やせ細ってないかねえ。あたしなら何年でもここでお世話してあげるのにねえ! あっははは」


「ちょ、ちょっといいですか! 一年間?」


完全に井戸端会議と化した中で、思わず声を上げる。


「なんだい? 聞いてなかったのかい?」
「国王付きは一年限定じゃないのかもよ」
「そうよ。ハイネ様も何年もいるみたいだったし」

「あたしらは契約で一年しか働けないんだよ。ナントカ義務とかで、ここで見たことは一切人に話さないって宣誓書まで書かされてるんだから、王様は随分と怖がってんだね」
「他の国の人に話されないためなんだろうけど、もうちょっと信用してくれても良いのにねえ」

「はあ……」

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