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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第5章 おうさま

「別に。用があってこっちきたらなんか捕まってたからさ。お前に食事を運んだメイドだっているんだから、そこらへんは気をつけてよね」
「あー」

そういえばそうだ。姫のふりをしていた時から数人のメイドには会っていたし、今はメイドの格好をしているけれど顔は隠せない。

今ようやく気づいた様子の私に、ハイネはあからさまに呆れ顔を見せる。


「……。まあ、心配しなくても姫の顔なんか普通ジロジロ見るもんじゃないから覚えてもいないと思うし、今は完全にメイドだから気づかれないと思うけど」

「はあ……あ、どこへ?」


それはそれで少し悲しい気もする。複雑な乙女心に震えていると、ハイネはさっさとどこかに歩き出してしまった。


「用があるって言ったでしょ。……そうだ。お前もおいで」
「へ?」


にやあっと笑った彼に、嫌な予感を抱えつつついていく。
明り取りの窓が少ない黒城に比べて、天井まで開けた大きな窓が多くある白城はまるで別の国のような印象を受ける。祭典のせいなのか通常もそうなのか、至るところにメイドの姿が見えてどこか賑やかさを感じた。

そのどこにいても、召使いたちは明るくハイネを歓迎し声をかけている。彼も自然に頬を緩ませ挨拶をして回って、その様子が微笑ましい。


「黒城と全然違いますね」
「あれは……檻だから。目的が違えば中身も変わるだろうね」
「檻……?――わあっ」


不穏な響きに首を傾げていると、ふいに大きな城門を開け、出た先に広がる光景に思わず感嘆の声を上げてしまった。

ルバルドとは比べ物にならない幅の跳ね橋の向こうに広がる城下町は、私の知っている町の規模を覆す。ルバルド全体が三つは収まってしまいそうな町並みの大きさに、どう建設するのかわからない大きさの建物が隆々といくつも街中に建ち並び、ひしめき合っている。

発展している国とは聞いていたけれど、ここまでレベルの違うものとは思っていなかった。けれど、遠い異国ともやり取りをしているなら、これだけ部分的に文明が進んでいてもおかしくないのかもしれない。


「驚いた?」


私の反応を楽しむようにクスクスと笑う。その目には自信と誇りが見えて、彼はこの国を背負う王様なんだと初めて実感する。
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