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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第5章 おうさま
「え、……いいえ」
贖罪としか聞いていない。けれど確かに、同じく引っ込んでおけばいいだけで本当は執事になる必要はなかったのだろうか?
頭をフル回転させても答えは出ず、私は早々に白旗をあげた。
「……オレという醜い存在を置いて、愛らしい執事として近寄れば、いつかどこかの姫君に好きになってもらえるんじゃないかと思ったからだ」
ジバル様は遠い目をしてそんなことを呟いた。
彼の忠誠心を知らないわけでもないだろうに、ハイネがそんなことをするとは信じられなかった。けれど、その彼を王様に仕立て上げているくらいだからむしろ納得かもしれない。つまりハイネはそうまでしても、何が何でも呪いを解きたいのだ。
「そんな……そんなの、酷い」
「まあ、大抵はオレの見た目に恐れをなして三日と持たなかったんだが……」
「そんなことないです!」
自嘲するように笑う彼に思わず声を上げた。
「ジバル様は怖くないです! そりゃ……体はちょっと大きい方ですけど、お顔もほとんど見えないですけど……でも! ジバル様は醜くないです!」
私の勢いに驚いたように凝然として立ち尽くす。恥ずかしい告白をしてしまった気持ちで少し気まずくなって視線を彷徨わせると、普段は隠れている部分に目がいった。
薄暗い部屋でも分かる、褐色のがっしりとした太い腕やそれを覆う薄いシャツ。胸元が少し開いた隙間から隆々と盛り上がった胸の筋肉。別の生物のような骨太の分厚い腰周りを、大きく太いベルトで締め付けて、その下には黒いパンツが彼の秘かに息づくものを隠している。布の奥で確かに脈打つその存在を思うと、花芯がじんと鼓動するを感じた。
(って、何見てるの)
無意識に彼の下半身を凝視していることに気づいて顔を背けるが、遅かったのかジバル様は口元に手をやりながら気まずそうに咳払いをして視線を漂わせている。
「いや……その、ありがとう」
「ひえ!」
見ていたことに関してかと思って、恥ずかしさで火を噴きそうになるが、彼は小さく笑って首を振った。