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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第5章 おうさま


「いない?」
「ハイネ様が呪いを受けてすぐに……、いなくなった」


それは行方不明とかそういう類のことなのだろうか。


「たった十六歳で、消えた王の代わりを務めるのは大変なことだっただろうに、彼は一晩で国王に近い重鎮連中を何かと理由をつけて追い出した。オレに王としての役割を与えて、自分は執事になった。オレが出会ったときと同じく、いやそれ以上に、あっという間にこの国を自分のものにした」

「ジバル様は……それが嬉しいの?」


偽者の王様を仕立て上げ、影ながら若き王に君臨した自分の主君の話をするジバル様はどこか陶酔したように語る。
彼は私の視線に気づいたのか、口元を押さえて、けれどはっきりと頷いた。


「ハイネ様が望んだ形ではなかっただろうが、あの方は王になるべき人だった。……薄暗い城に閉じ込めて、愛玩動物のように鑑賞されるための人じゃない」

「どういうことですか?」


ふと、ハイネが黒城を檻だと漏らしていたことを思い出す。ジバル様は目を細めて、目の前に立つ黒い城を見た。



「あの黒城は、王様がハイネ様を愛でるためだけに、閉じ込めておくためだけに、つくった塔だ」


「閉じ込めておくため……?」

「お妃が亡くなられてから王様はハイネ様に異常に執着していた。だから、ずっと外に出さず閉じ込めていたのだ」

「そんなの、……でも、結婚は? あの絵本ではお妃に逃げられたことが呪いの発端でしょう?」


何かが違う。ずっと感じていた違和感や疑問は増えるばかりだ。
あの絵本は途中まで本当のことだと言っていた。では、どこまでが本当なのか。

ジバル様は私の気持ちを理解したように頷いた。



「あの絵本にあった妃は、婚約者だ。許婚とも言うべき相手がいたが、結婚前日に駆け落ちしてしまった。あの頃黒城にほとんどの時間を閉じ込められて過ごしていたハイネ様にとって、彼女との時間は唯一外に出られる時で、結婚したらその時間が永遠に続くと思っていた。だから、彼は絶望し、女神像を壊した」

「そんな、だって、ジバル様もいたんじゃないんですか」

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