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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第2章 連れられて身代わり
白く透き通ったきめの細かい肌に、吸い込まれそうな大きい青い目。ゆるく顔を覆う金髪の髪は可憐で、鼻や口といったパーツがいちいち小ぶりなのでボーイッシュな女の子といわれても納得してしまいそうだ。
ついつい彼の愛くるしい顔に見惚れてしまったが、不思議そうに困った顔で首を傾げるので我に返った。
「なんですか?」
「あっ……いえ、王様は、その、寂しいんじゃないかなって」
言いながら、何を言っているんだと顔が熱くなるのを感じた。
王様が寂しいなんてバカみたいだ。国を出る前にもあれほど必要以上に口を聞くなといわれていたのに、こんな庶民丸出しの考え笑われてしまうだろうか。
「……僕が、いますから」
ちらと視線を向けると、ハイネは一瞬嘲笑にも思える複雑な表情を浮かべた。
一体どんな人生を歩んでくれば、こんな幼い少年がそんな感情を抱くのか分からなくて、私はかける言葉が見つからなかった。
(兄さんに言われていた通りだわ)
両親共にミアが物心つく前に亡くなって、けれど少なくとも雨風を凌げる家があって、守ってくれる兄がいた。兄さんはよく「ミアは世間知らずだから、俺が倒れたらと思うと心配だよ」とからかった。その時は自分だってもういい年なんだから、兄さんさえ許してくれればいくらでも働いてお金を稼げると思っていたのだ。けれど、今日一日だけでも自分がいかに世間知らずに生きてきたかを十二分に痛感する。
(兄さん……)
結局、兄さんには反対されるだろうと思ったので手紙を書いて渡してもらうことにした。お別れを言えなかったのは気がかりだったが、会うとどうしても決意が鈍るだろうし、兄さんを説得するほど口達者でもない。だから仕方なかったのだ。
今頃は手厚い看護を受けられているだろうか。
「あの、たまに、国に帰ったりしても大丈夫ですか?」
「たまに?」
「ええ。一日二日とか、それくらいでいいんですけど……。今までのお姫様たちは里帰りなんてしなかったの?」