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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第5章 おうさま


「どうですか? 私のこと、ちゃんと見えますか?」

「あ、ああ……そのっ!」


その途端、両手が私の体を掴んで強く抱え込まれた。大きな体の胸にぎゅうと抱き締められる。まるで肉食獣に食べられるような力強さに、息が苦しくなる。


「ふあっ」

「すまない……その、あまり、見ないでくれ。心臓がもたない」


早口でそれだけ言うと、またぎゅっと腕に力がこめられる。

がっしりとした筋肉に包まれると安心感とあたたかさが私の体を満たす。

ジバル様の言葉は本当だったようで、よくよく耳をすませると、彼の心臓が物凄い速さで脈打っているのが聞こえてきた。まるで大量の馬が走っている地響きのようでうっかり頬を緩めるけれど、実のところ私だって結構な速さでドキドキいっている。


(でも……あったかいな)


初めての熱い抱擁に私は眩暈を催しつつも、聞こえてくる鼓動の速さが、逞しい体の熱が、嬉しかった。

同時に自然と沸き起こる淡い疼きに目を背けて、その腕の力強さに身をゆだねていると、抱き締められた勢いでそのまま彼の膝に乗り上げていたことに気づく。

その臀部に硬い熱を感じた時、私は飛び上がりそうなほど驚いた。


(こ、これって、これって…!)


言わずもがな彼自身の欲望なのだろうけれど、今まで散々抱かれてきたと思っていた相手はハイネだったわけで、つまりジバル様の熱を初めて、布越しだが触れていることになる。

身を硬くしたことで気づいたのか、ジバル様は少し腕の力を緩めて、気まずそうに顔を背けた。


「す、すまない……もう、戻ったほうがいいだろう」


腕を開放されると、私はいつでも立ち上がってここから離れることができる。
けれど、熱く猛るその存在が脈打つのに合わせるように、次第に私の花弁の辺りもドクドクと期待に太鼓を鳴らすので動けなかった。


「……ミア?」

心底弱ったという顔で、けれど動き出さない私の様子を伺う。
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