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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第5章 おうさま


「私は、王様とか騎士とか、そんなの関係なくジバル様が好きです。だから、抱いてほしいし、触れたい。それじゃあ駄目ですか?」


我ながらロマンも可愛さもない、本能そのままの獣じみた発言だ。
完全に仰向け状態の彼はぽかんとして、転がった勢いで顔が露わになっているのも気づかないまま、私を見上げている。

その上に跨り、膝立ちで彼を見下ろすのは何ともいえない満足感に満たされる。少し、ハイネの気分が分かってしまったかもしれない。


「……、あの、何か言っ……!」


さすがに沈黙のままでは抑えていた恥じらいが顔を出してしまうのだけれど、と思っていたら急に腕をつかまれ引き寄せられる。あっという間にジバル様の腕に収まって、広いベッドの上に抱かれながら寝転がる。蝋燭の明かりなんかいらないくらい、とても近くに顔がある。


「すまない」
「い、いえ」

その目はもう悩んだり怯えていたりするものじゃなくて、まっすぐに私を見つめた。心なしか瞳孔が広がり、まさに肉食獣という雰囲気が滲み出ていて私は今更、緊張し始める。

彼はその反応すら楽しむように愛おしそうに目を細め、またそっと私の頬を指先でなぞり、髪をよけた。


「君に、そんなことを言わせるなんて騎士ですらないな」


むしろあんなことを言ってしまう私はレディーですらないんだろうけれど。そんなことを思っていたら口付けを落とされる。今度は軽く、触れるだけ。困ったように笑う彼の顔があった。


「君が好きだ、ミア。とても愛しく思っている」

「ジバル様……」


ジバル様は私を見つめてふっと、今度は陽だまりのように笑った。


「そのキラキラした目が好きだ。やんちゃに走り回る姿も、嬉しそうに口いっぱいにケーキを頬張る姿も、ハイネ様に食って掛かる姿も好きだ」

「う、うう……」


喜びたいのに、抑えていたものが解放されたようにジバル様は饒舌に褒めちぎって、普段まともに褒められたことのない私は少しくすぐったい。というか気恥ずかしい。眩しい目を向けられると心臓がうるさくて、顔を背けたくなるのに彼の両手がそれを許さない。

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