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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第5章 おうさま


「恥ずかしがる顔も可愛い。駄目だ。こっちを向いてくれ」

「~~っは、恥ずかしいです! ごめんなさい勘弁してください!」

「ふふふ、それは残念だ」


嬉しそうに笑い、顔を両手で隠してしまった私の手の甲にもちゅっと唇を落とす。
転がって逃げるように体を捩る私を抱き寄せると、太腿の付近に熱く硬いものを押しつけられてはっとした。指の隙間からそっと彼を見ると、少し恥ずかしそうに苦笑した。


「……怖いか?」


私はおずおずと頷く。するとぐっと頭の下に腕を入れられて、腕枕をされた。そのままその手は頭を優しく撫で、もう片手は私の腰に緩く回される。


「怖いならしない。今日はもう遅いし、このまま眠るといい」


柔らかな声音でそんなことを囁いて、最後に私の額にキスをした。
頭を撫でる手は優しく、本当に寝かしつけようとしているようだ。


「で、でも……」


私は男じゃないから分からないけれど、辛いのではないだろうか。戸惑う私に、ジバル様は小さく笑う。


「放っておけば収まる。無理をしなくてもいい」


無理をしているんだろうか。分からない。けれど優しく抱き締められているからか、さっき感じた恐ろしさはもう姿を消していた。それより今は、少しでも多くジバル様に触れたかった。


(だって、もう二日しかない)


私は起き上がると、彼の服を解き出した。マントも、その下のベストも、シャツも性急にボタンを外す。その手を彼が焦ったように止めた。


「お、おい。無理を」
「無理じゃないです! 私、私その……」


ジバル様の声を掻き消すように首を振って答える。
初めてじゃない。けれど、だからこそ、庭で彼に口付けされた時から、私の最奥は彼の存在を欲してやまないのだ。

羞恥心と欲が入り乱れて言葉を紡げない私に、彼は体を起こしてその手を握る。


「分かった」


低く優しく響くその声に、私はなぜだか泣きそうになった。

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