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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第6章 あいするひと
王子だし、執事という形でも顔を見せないんだろうか。私の言葉にハイネは窓を見てから、またあの複雑な顔をした。
苦しそうな、笑っているような。
「お前ほど暇じゃないからね」
けれどすぐにいつものように笑うと、走って行ってしまった。これを渡すためだけに夕暮れに走り回っていたんだろうか。
その後ろ姿を見ると、またモヤモヤがぶり返してくる。
二日しかない。だから、私自身が彼の呪いを解くほど、愛することも愛されることもできないだろう。けれど、私がいなくなったあとも、ジバル様とハイネはここでずっと人目に怯えて生きるんだろうか。自分を醜いと思いながら。
(……そんなの、嫌だな)
渡されたドレスは彼が抱いていたせいか暖かかった。
――数時間後。
私は高鳴る胸を抑えて、緊張しながら青いドアをノックした。
ややあってから見慣れた男が顔を出す。
「ミアか……!」
私とわかると顔を綻ばせたけれど、格好を見て目をぱちくりとさせた。私はぎこちなくスカートの裾を開く。
「あの……、どうですか?」
「ああ、とても……綺麗だ」
眩しそうに見つめて、頷いた。その顔を見れただけで、着慣れないドレスと再び格闘しただけあった。
「前夜祭か」
「ええ、……ひゃっ」
思い至ったようにジバル様はまた頷き、腰を引いて私を部屋の中に引き込む。
あっという間に腕の中に閉じ込められていて、頬ずりするようにして口元にキスを降らせる。堪えきれないとばかりに落ちてくる唇に、腕の力に、私はくすぐったさを覚えた。
「ふふ、どうしました?」
「すまない。その格好で他の者たちの目に触れるのかと思うと、ついな」
まるでマーキングのように、すりすりとしながらきつく抱きしめるので、私は慌てて声を上げた。
「ち、違うんです! 前夜祭には行きません。ただ、せっかくお借りしたから、見せたくて」
姫じゃないと分かってからはずっとメイド服のままだった。普段ならそれでもよかったけれど、どうせなら着飾った姿も見て欲しかった。アメリア姫としてではなくて、ミアとして。
苦しそうな、笑っているような。
「お前ほど暇じゃないからね」
けれどすぐにいつものように笑うと、走って行ってしまった。これを渡すためだけに夕暮れに走り回っていたんだろうか。
その後ろ姿を見ると、またモヤモヤがぶり返してくる。
二日しかない。だから、私自身が彼の呪いを解くほど、愛することも愛されることもできないだろう。けれど、私がいなくなったあとも、ジバル様とハイネはここでずっと人目に怯えて生きるんだろうか。自分を醜いと思いながら。
(……そんなの、嫌だな)
渡されたドレスは彼が抱いていたせいか暖かかった。
――数時間後。
私は高鳴る胸を抑えて、緊張しながら青いドアをノックした。
ややあってから見慣れた男が顔を出す。
「ミアか……!」
私とわかると顔を綻ばせたけれど、格好を見て目をぱちくりとさせた。私はぎこちなくスカートの裾を開く。
「あの……、どうですか?」
「ああ、とても……綺麗だ」
眩しそうに見つめて、頷いた。その顔を見れただけで、着慣れないドレスと再び格闘しただけあった。
「前夜祭か」
「ええ、……ひゃっ」
思い至ったようにジバル様はまた頷き、腰を引いて私を部屋の中に引き込む。
あっという間に腕の中に閉じ込められていて、頬ずりするようにして口元にキスを降らせる。堪えきれないとばかりに落ちてくる唇に、腕の力に、私はくすぐったさを覚えた。
「ふふ、どうしました?」
「すまない。その格好で他の者たちの目に触れるのかと思うと、ついな」
まるでマーキングのように、すりすりとしながらきつく抱きしめるので、私は慌てて声を上げた。
「ち、違うんです! 前夜祭には行きません。ただ、せっかくお借りしたから、見せたくて」
姫じゃないと分かってからはずっとメイド服のままだった。普段ならそれでもよかったけれど、どうせなら着飾った姿も見て欲しかった。アメリア姫としてではなくて、ミアとして。