この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第6章 あいするひと
王子だし、執事という形でも顔を見せないんだろうか。私の言葉にハイネは窓を見てから、またあの複雑な顔をした。
苦しそうな、笑っているような。

「お前ほど暇じゃないからね」

けれどすぐにいつものように笑うと、走って行ってしまった。これを渡すためだけに夕暮れに走り回っていたんだろうか。

その後ろ姿を見ると、またモヤモヤがぶり返してくる。

二日しかない。だから、私自身が彼の呪いを解くほど、愛することも愛されることもできないだろう。けれど、私がいなくなったあとも、ジバル様とハイネはここでずっと人目に怯えて生きるんだろうか。自分を醜いと思いながら。


(……そんなの、嫌だな)


渡されたドレスは彼が抱いていたせいか暖かかった。





――数時間後。


私は高鳴る胸を抑えて、緊張しながら青いドアをノックした。

ややあってから見慣れた男が顔を出す。

「ミアか……!」

私とわかると顔を綻ばせたけれど、格好を見て目をぱちくりとさせた。私はぎこちなくスカートの裾を開く。

「あの……、どうですか?」
「ああ、とても……綺麗だ」

眩しそうに見つめて、頷いた。その顔を見れただけで、着慣れないドレスと再び格闘しただけあった。

「前夜祭か」
「ええ、……ひゃっ」

思い至ったようにジバル様はまた頷き、腰を引いて私を部屋の中に引き込む。

あっという間に腕の中に閉じ込められていて、頬ずりするようにして口元にキスを降らせる。堪えきれないとばかりに落ちてくる唇に、腕の力に、私はくすぐったさを覚えた。


「ふふ、どうしました?」
「すまない。その格好で他の者たちの目に触れるのかと思うと、ついな」


まるでマーキングのように、すりすりとしながらきつく抱きしめるので、私は慌てて声を上げた。


「ち、違うんです! 前夜祭には行きません。ただ、せっかくお借りしたから、見せたくて」


姫じゃないと分かってからはずっとメイド服のままだった。普段ならそれでもよかったけれど、どうせなら着飾った姿も見て欲しかった。アメリア姫としてではなくて、ミアとして。
/192ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ