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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第2章 連れられて身代わり

扉の前で待っていたハイネが、自室への案内の途中にニコニコわくわくした顔で聞いてくる。
いかがですかも何もない。たった一瞬で終わってしまったし、感想なんか沸くはずもない。
しかしそう、思い出せば……
「――あ、目が……綺麗、だった」
あの緑色の瞳。蝋燭の炎に反射してキラキラと輝いて、太陽の下で見たらもっと綺麗だろう。
ほうっと思い出しながら呟くと、ハイネは期待した答えと違ったのか眉をひそめた。
「目? 怖いとか、恐ろしいとか」
「あんまり見えなくて……お食事の時にはお顔をちゃんと拝見できるかしら」
「お食事……?」
あの見たこともない輝きにうっとりしていたが、ハイネの反応に徐々に現実に戻される。また何か失言をしていたか。
「あ、お食事は……この国では一緒にとらないのかしら」
「ええ、そうですね。今までの姫様方は望まなかったので、自室まで運んでおりました」
「そうなの……」
私の心に少しの心細さが飛来する。食事はいつも兄さんや同じような境遇の子供たちと分け合って食べていたから、急に一人ぼっちでの食事とは物寂しい気持ちになってしまう。王様やお姫様は、私が考えていたよりもずっと孤独なものらしい。
「ハイネは……」
一緒に、と誘おうとして、歩きなれないハイヒールに押し込んだつま先がジン、と痛んだ。
(そうだ。今私はお姫様なんだ)
召使いと一緒に卓を囲むなんて不自然に思われるだろう。思わず口をつぐむと、彼は微笑んだだけで追及はしなかった。
「姫様のお部屋はこちらになります。日中はどちらにいても構いませんが、日が沈んだらこちらのお部屋でお休みください」
ハイネはそれだけ言うと、私が入ってドアを閉めるまで入り口で立ち止まり、頭を下げたままだった。お礼を言ってドアを閉めてやっとドア越しに立ち去っていく気配を感じて、大きなため息をつく。
「……わあ」
改めて部屋の中を見渡すと、圧倒された。
いかがですかも何もない。たった一瞬で終わってしまったし、感想なんか沸くはずもない。
しかしそう、思い出せば……
「――あ、目が……綺麗、だった」
あの緑色の瞳。蝋燭の炎に反射してキラキラと輝いて、太陽の下で見たらもっと綺麗だろう。
ほうっと思い出しながら呟くと、ハイネは期待した答えと違ったのか眉をひそめた。
「目? 怖いとか、恐ろしいとか」
「あんまり見えなくて……お食事の時にはお顔をちゃんと拝見できるかしら」
「お食事……?」
あの見たこともない輝きにうっとりしていたが、ハイネの反応に徐々に現実に戻される。また何か失言をしていたか。
「あ、お食事は……この国では一緒にとらないのかしら」
「ええ、そうですね。今までの姫様方は望まなかったので、自室まで運んでおりました」
「そうなの……」
私の心に少しの心細さが飛来する。食事はいつも兄さんや同じような境遇の子供たちと分け合って食べていたから、急に一人ぼっちでの食事とは物寂しい気持ちになってしまう。王様やお姫様は、私が考えていたよりもずっと孤独なものらしい。
「ハイネは……」
一緒に、と誘おうとして、歩きなれないハイヒールに押し込んだつま先がジン、と痛んだ。
(そうだ。今私はお姫様なんだ)
召使いと一緒に卓を囲むなんて不自然に思われるだろう。思わず口をつぐむと、彼は微笑んだだけで追及はしなかった。
「姫様のお部屋はこちらになります。日中はどちらにいても構いませんが、日が沈んだらこちらのお部屋でお休みください」
ハイネはそれだけ言うと、私が入ってドアを閉めるまで入り口で立ち止まり、頭を下げたままだった。お礼を言ってドアを閉めてやっとドア越しに立ち去っていく気配を感じて、大きなため息をつく。
「……わあ」
改めて部屋の中を見渡すと、圧倒された。

